いくらマッサージをしても解消されない、つらい肩こりに悩む人がいます。慢性的な肩こりを解消するためには、鍼灸治療が有効です。肩こりの原因が分かれば、なぜ鍼灸治療が肩こりの治療に役立つのかも分かります。この記事では、肩こりの原因と鍼灸の治療効果について解説します。
まず、肩こりとは何か?
肩まわりのしくみ
肩には、腕を支える支点となる腱板と、肩の周りの筋肉をコントロールする肩甲骨があります。肩周辺の筋肉には、肩甲骨を覆う僧帽筋、首の後ろと肩甲骨をつなぐ肩甲挙筋、肩甲骨を閉じて胸を張ったときに動く菱形筋があります。これらの筋肉の働きによって、肩や腕が動いているのです。
筋肉が硬くなること
肩こりとは、前述した僧帽筋、肩甲上腕筋、僧帽筋などの筋肉が硬くなった状態のことです。肩は、頭や腕の重さを支えているため、ストレスがかかりやすい部位です。デスクワークや無理な姿勢での読書などで長時間負荷がかかると、肩の筋肉が疲労してしまいます。本来、筋肉は柔らかいのですが、疲労すると硬くなり、血管やリンパ管が圧迫され、血流が悪くなります。これが肩こりの原因といわれています。また、筋肉の疲労だけでなく、血流の低下を促す生活習慣も肩こりの原因です。
特に、肩周辺の筋肉は層状になっており、肩こりが慢性化するケースもあります。また、肩周辺の筋肉は孤立しているわけではなく、他の部位の筋肉とつながっているため、一つの筋肉が凝ると相互に作用し、首や背中など他の部位に痛みを与えることもあります。
肩こりの原因とは?
生活習慣が原因の肩こり
肩こりの原因として最も多いのは、日々の生活習慣によるものです。長時間同じ姿勢を続けたり、無理な姿勢を続けたりすることで、筋肉に負担がかかってしまいます。疲れた筋肉は硬くなり、やがて血管を圧迫して肩こりにつながることもあります。また、運動不足や加齢による血行不良も、肩こりの原因になります。
また、血管の収縮も肩こりの原因になります。血管の収縮と拡張は自律神経によってコントロールされていますが、ストレスで血管が常に収縮した状態にあると、血行が悪くなり、肩こりにつながります。冷え症に悩む人の多くが肩こりになるのは、血流が悪くなるためです。
さらに、睡眠不足も肩こりの要因のひとつ。体内に蓄積された疲労をリセットするには、良質な睡眠を十分にとるしかありませんが、良質な睡眠がとれないと、蓄積された疲労は回復せず、肩の筋肉の疲労が肩こりにつながってしまうのです。
病気による肩こり
肩こりは、病気が原因で起こるケースもあります。肩こりの合併症として多いのが、眼精疲労です。パソコンや携帯電話などを長時間見ていると、まばたきの回数が減り、目が乾いてきます。このようなドライアイの状態で、さらに長時間、小さな文字や点滅する画面を見ていると、慢性的な眼精疲労に陥ってしまいます。その結果、目の周りの筋肉が緊張し、肩こりの原因になります。また、近視や乱視、老眼があると、はっきり見ようとすると筋肉が緊張し、これも肩こりにつながります。
メカニズムは不明ですが、高血圧や低血圧、狭心症や心筋梗塞などで血流が悪くなると、肩こりになることもあります。さらに、顎関節症が肩こりの原因になるケースもあります。これは、顎関節症によって顎の周りの筋肉が緊張し、それが首や肩の筋肉に影響を与え、肩こりを引き起こすからです。
肩こりは鍼灸で治せる?
鍼灸治療ってどんなことをするの?
鍼灸は、東洋医学に基づいた治療法です。東洋医学では、全身に点在するツボは、血流を介してツボの先にある臓器や組織とつながっていると考えます。つまり、ツボは体内の問題に最も効果的にアプローチできる場所であり、それを鍼で刺激するのが鍼灸治療なのです。肩こりの場合、ツボを鍼で刺激することで、肩こりの解消やツボ周辺の筋肉、ツボにつながる筋肉や他の部位の緊張を和らげる効果が期待できるのだそうです。
鍼灸は、層になっている肩の筋肉の深部に働きかけるので、鍼灸を受けた後も効果が持続します。一方、マッサージは肩こりを解消する方法として一般的ですが、一時的に凝った筋肉を揉みほぐすだけなので、根本的な治療とは言えません。治療時はとても気持ちいいのですが、あくまでも一時的な解消に過ぎません。また、マッサージでほぐせるのは表面付近の筋肉だけで、深部の筋肉が硬くなっていると対処できません。
鍼灸の効果(1) : 血行を促進する
鍼を刺すと、体自体には感知されない小さな傷が細胞にできます。この傷を体の免疫細胞が修復し、鍼を異物として排除することで、血行が促進されます。鍼灸の血行促進効果は治療中に実感でき、徐々に体が温かくなってきます。血行が良くなることで、冷えはもちろん、血液に閉じ込められた疲労も解消され、肩こりも解消されます。また、血液は組織に必要な酸素や栄養を運ぶので、筋肉に栄養が行き渡り、筋肉疲労が解消されます。
鍼灸の効果(2):自律神経を整える
ストレスによって自律神経が乱れると、血流が悪くなったり、肩が凝ったり、夜眠れなくなったりと、さまざまな症状が現れます。鍼灸には自律神経のバランスを整える作用があるので、自律神経の乱れによって起こる様々な症状を改善することができます。肩こり、血行不良による肩こり、寝不足、眼精疲労なども解消することができます。
鍼灸の肩こり解消効果が世界保健機関(WHO)に認められる
世界保健機関(WHO)は、鍼灸の適応症を発表しています。その中には五十肩も含まれており、鍼灸の五十肩解消効果は世界的に認められていると言ってよいでしょう。また、肩こり以外にも、肩こりの原因となる眼精疲労、不眠症、自律神経失調症などにも鍼灸の適応があります。
治療後すぐに体が楽になりますよ
鍼灸は即効性があることでも注目されています。治療直後は体がスッキリし、重くこわばっていた肩が軽くなったように感じます。さらに定期的に治療することで、鍼灸の効果が長く続き、肩こりが軽くなっていきます。
肩こりには予防が大切です
つらい肩こりは、鍼灸治療である程度は改善されますが、生活習慣と密接に関係しているため、完治は困難です。肩こりをひどくしないためには、日々の予防が大切です。
長時間同じ姿勢でいないこと
デスクワークや読書など、長時間同じ姿勢でいると、筋肉が硬くなり、血流が悪くなります。こまめに立ち上がる、姿勢を変えるなどして、筋肉に長時間負担をかけないように心がけましょう。また、デスクワークや読書に集中すると、まばたきの回数が減るため、眼精疲労につながることがあります。眼精疲労による肩こりを防ぐためにも、ときどき目を休ませるようにしましょう。
正しい姿勢
肩こりの原因のひとつに、姿勢の悪さが挙げられます。猫背になると鎖骨や背骨が血管を圧迫し、目の前のものを見ようと顎を突き出すため、重い頭を支える肩や首にも負担がかかってしまいます。デスクワークやウォーキングの際は、体全体で頭を支えるように背筋を軽く伸ばし、あごを引くなどして、正しい姿勢を保ちましょう。
適度な運動は血行を良くします
肩こりを解消するためには、血行を良くすることも大切です。血行を良くするために、適度な運動を行いましょう。筋肉を動かすと、筋肉のポンプ機能によって血流が良くなり、肩こりを予防することができます。エスカレーターを使わず階段を使う、ストレッチ体操をするなど、できるだけ小さなことでも効果があります。毎日の生活の中に運動を取り入れましょう。
お風呂にしっかり入って体を温めます
毎日お風呂に入っている人は、たまには熱いお風呂に入って体を温めるとよいでしょう。しっかり浸かることで血行が良くなり、肩こりの予防にもなります。
最後に
鍼灸は筋肉の緊張をほぐし、血行を良くするので、つらい肩こりにはとても効果的です。体の奥にある筋肉に直接働きかけるので、治療を受けるたびに体が軽くなり、スッキリします。肩こりにお悩みの方は、日々の生活習慣の改善と合わせて、鍼灸治療を試してみてはいかがでしょうか。